ゴールドパートナー契約会見取材レポート

 519日、日本車いすフェンシング協会が住友三井オートサービス株式会社と初のゴールドパートナー契約を結んだことを発表した。私は赤坂の日本財団ビルで行われた会見に出席し、その模様を取材。2020年パラリンピックに向けた選手・コーチの強化プランや大会目標などについて、小松真一理事長の口から具体的に語られた。

 

左から加納選手、櫻井選手、小松理事長、川越副社長、キィヘッドコーチ、牛込トレーナー
左から加納選手、櫻井選手、小松理事長、川越副社長、キィヘッドコーチ、牛込トレーナー
クルマ事業者としての使命を語る川越氏
クルマ事業者としての使命を語る川越氏

自動車のリースと総合管理を全国規模で展開する、住友三井オートサービス株式会社。壇上へ登った川越弘三代表取締役副社長は、事故予防だけでなく事故により障害を負った人々にスポーツを通して夢と希望を与えるという、クルマ事業者としての使命を語った。また、今回のパートナー契約へ至った経緯について、「手弁当」で協会運営を行ってきた小松理事長の熱意に共感したと明かした。契約は2017年から2020年まで年間500万円を予算とし、主に競技の普及や代表活動、協会主催大会の支援を行うという。 


フェンシング用品を説明する小松理事長
フェンシング用品を説明する小松理事長

車いすフェンシング協会からは、小松理事長が競技の現状や今後の目標について説明した。普段は軽やかな冗談で場を和ませてくれる、明るく遊び心のある小松氏だが、メディアを前に話す姿にはやや緊張の色が見えた。現在、協会には6名の強化指定選手(日本代表選手)がおり、キィ(フン・インキィ)ヘッドコーチとともに京都を拠点に強化合宿を行っている。2020年の東京パラリンピックでの目標として、小松氏 は「4個のメダル獲得。そして男女ともに3種目(フルーレ、エペ、サーブル)に出場」を挙げ、それに向けて選手と指導者両方の育成が必要であると話した。特に、選手の育成は喫緊の課題だ。現在、女子の日本代表選手は1名のみ。東京パラリンピックの選考が始める2018年までに、代表レベルの選手を揃えなければならない。指導者については、高校や大学でフェンシングの指導をする教員を中心に、障害者へのコーチング研修会を開催するという。また、「2020年パラで(車いすフェンシングの)会場がいっぱいになるように」、小中学校での体験会を通じ競技の普及活動も並行して行っていく予定だ。

  

キィコーチは強化システムの構築を重要視
キィコーチは強化システムの構築を重要視

会見には日本代表の加納慎太郎、櫻井杏理両選手とキィコーチも出席。16歳で交通事故により左膝下を失った加納選手は、「車いすフェンシングに出会って夢や希望を持てるようになった」ひとりだ。今回のパートナー契約を受け、改めて「支援してくれる人たちのためにも2020年にメダルを獲りたい」、と決意をあらわにした。また、今年の2月に行われたハンガリーワールドカップで銀メダルを獲得した櫻井選手は、「決勝に上がってはじめて世界の厳しさを感じた」、とさらなるレベルアップの必要性を語った。それでも現状は、彼らのように世界で活躍する選手ですら、遠征費のほとんどが自費。「大きな会社にスポンサーになってもらい本当に感謝」、とキィコーチとともに素直な思いを述べた。 

私は最前列で取材に臨んだ(右下)
私は最前列で取材に臨んだ(右下)

 小松氏は会見後、「今回のパートナー契約はNTC(ナショナル・トレーニング・センター)の認可、櫻井杏理の銀メダル獲得といったことが、全て良いタイミングで重なって実現した」と話した。NTCに認可されることにより、車いすを固定するピストや動作解析マシンといった設備の補助が受けられる。それに住友三井オートサービスの援助が加われば、「例えば今まで年に3回だったワールドカップへの参加を4回に増やし、より選手に経験を積ませることができる」ようになるという。今後は、練習での動作解析と世界大会での実践を組み合わせることで、さらに効率的なレベルアップが期待できるだろう。


  私は今回の会見で初めて、日本車いすフェンシングのチームが
2020年に目指す具体的な目標を知った。今はそれに向け、やっとスタートラインに立ったところだろう。手にしたチャンスを「結果」という形で次につなげることができるかどうか、今後は彼らの真価が問われる。だが、活動を取材している選手たちが日の丸を背にメダルを掲げる姿を想像し、私は心が震えた。選手たちがスポーツから夢や希望を得たように、私も彼らに同じものを託しているのだと気づいた。ひとたび選考が始まれば、2020年まではあっという間だろう。その準備期間といえる重要なこの一年が、日本車いすフェンシングにとって飛躍の年になることを願う。

 

 

 

(記事・慶應スポーツ新聞会 下川薫)