京都取材レポート

教室の扉を開けると日本代表の練習所が広がっている
教室の扉を開けると日本代表の練習所が広がっている

ゴールデンウィーク真っ只中の5月初旬、私たち車いすフェンシング広報インターンは、京都で行われた強化合宿を取材した。強化合宿は、東京を拠点としている選手の中で、世界大会に出場する選手たちが京都の練習場に集まり、京都の選手たちとともに練習を行うものである。今回は、5月7日からオランダで行われるワールドカップに向けて最後の調整を行う位置付けだ。

 

 

京都での練習場所は以前と変わらず廃校となった小学校。しかし、その雰囲気は昨年8月に取材した時とはかなり違っていた。2020年の東京パラリンピック開催に向けてのフラッグやトロフィーをはじめとするさまざまな品が飾られていたほか、競技用車いすには「JAPAN」のマーク。まさにここが日本代表の成長する場所だと言わんばかりに輝きを放っていた。

 

メダル獲得後、一層熱心に練習する櫻井選手(右)
メダル獲得後、一層熱心に練習する櫻井選手(右)

変わっていたのは練習場の見た目だけではない。今年の2月に行われたハンガリーワールドカップにおいて、女子選手で唯一強化合宿に参加する櫻井杏理選手が17年ぶりに女子エペカテゴリーBで銅メダルを獲得。競技レベルが大きく上昇している。しかし、櫻井選手は現状に全く満足していない様子だ。銀メダルを獲得したハンガリーWCにおいては、世界大会とは言えリオパラリンピックでプレーしていたような強豪選手の出場は見送られた。だからこそ、真の世界レベルとはまだ戦えていないという意識が大きいのだろう。「(強豪選手がいない大会では)勝ち続けなければ意味がない」と語るその言葉に、櫻井選手の今の気持ちが集約されている。銀メダルという栄光に甘んじず、さらなる成長を目指す姿勢が練習の密度を高めているのかもしれない。

 

櫻井選手をはじめとする多くの選手たちの成長を支えるのは、元車いすフェンシング選手でシドニー、アテネパラリンピック金メダリストの馮英騏(フン イン キィ)コーチ。キィコーチは昨年の10月から本格的に日本車いすフェンシングチームの指導をはじめ、櫻井選手の銀メダル獲得を支えた立役者の一人だ。常に京都の練習場で指揮を執り、練習メニューの組み立てから選手の練習相手までこなしている。休憩中は選手から日本語を教えてもらうこともあると語るキィコーチだが、練習が始まると穏やかな様子から一転し、表情は真剣そのもの。笑顔なしの熱心な指導で黙々と選手の相手をする。キィコーチ相手に練習に励む加納慎太郎選手は、「キィコーチはフェンシングのセンスのかたまり」と語る。そのセンスを少しでも自分のものにしようと、選手たちは日々キィコーチとの練習に励んでいる。優しく気さくな性格と車いすフェンシングへの情熱と確かな実力、魅力あふれるキィコーチの存在は車いすフェンシングチームの成長を確かなものにしているに違いない。

 

すぐ近くに迫るオランダワールドカップへの準備は着々と進んでいる。恩田竜二選手はハンガリーワールドカップから飛躍を狙い、フルーレ、サーブルともにベスト8を目標としている。アテネパラリンピックサーブル団体で香港チームの一員として金メダルを獲得したキィコーチ相手にサーブルの練習に熱中する。相手の剣をはじいたり止めたりするパワーを武器にオランダワールドカップで多くの勝利を狙う。加納選手はエペ、フルーレともにベスト16が目標。レベルアップのために、フェンシングの練習だけでなく、通常の練習後に筋力トレーニングに励む。さらに大きな力をつけた加納選手の戦いぶりにも期待がかかる。

 

練習場の雰囲気、選手の実力など大きな変化の途中にある現在の車いすフェンシング。しかし、日本では車いすフェンシングのみならず、健常フェンシングもまだメジャーなスポーツとは言えない現状にある。その状況に対して、「もっと多くの人にフェンシングの面白さを知ってほしい」と藤田道宣選手は言う。私たちは、練習を取材するたびに車いすフェンシングの面白さを改めて感じ、それを発信したいと思ってきたが、力不足を痛感した。常に成長し続ける選手たちのように、私たち広報インターンもより多くの方々に車いすフェンシングの魅力をお届けできるよう、より一層努力していきたいと感じる取材だった。

 

 

(記事・慶應スポーツ新聞会 清野日奈子)