京都取材 二日目

大会当日の朝、道場から器具の運び出しをする
大会当日の朝、道場から器具の運び出しをする

 取材2日目の87日には、全日本車いす選手権大会がエルイン京都で開催された。全日本という大きな規模で大会が開かれるのは、今大会が初めて。ピストの搬入や会場の設営は、サポートスタッフの手で全て行われた。大会には、男子の部に10名、女子の部に4名がそれぞれ参加した。

 選手の関係者だけでなく、東京都オリンピック・パラリンピック準備局、東京の練習拠点の北区役所、2020年東京パラリンピック車いすフェンシングの開催地である千葉県・千葉市、パラスポーツ全体をサポートする日本財団、多くの視察の方々やテレビカメラも入り会場は大いに賑わった。

 

 

女子の部で優勝、男子の部でもベスト4の櫻井杏理選手
女子の部で優勝、男子の部でもベスト4の櫻井杏理選手

まずは、女子の個人戦が行われた。5ポイント先取の総当たり戦で、勝数の一番多い選手が優勝となる。ここで圧倒的な強さを見せたのが、櫻井杏理選手。ほとんど相手にポイントを許すことなく、全勝での優勝を飾った。

櫻井選手が車いすフェンシングを始めて今年で2年目。もとは車いすスキーの競技者だったが、一年を通してできる競技を求めて車いすフェンシングの選手へと転身したという。2年間の練習の成果もあり、現在、櫻井選手の実力は国内女子の中で群を抜いている。今後の目標は国内大会で自力優勝をすること。そして、4年後に控える東京パラリンピックへの出場も目指しているそうだ。

 

しかし、パラリンピックへの道のりはまだまだ遠い。海外の選手との実力差は大きく、国内大会で優勝してもパラリンピックの出場権が得られるとは限らない。だからこそ、順位にこだわらない実力の向上は不可欠だ。櫻井選手は、「駆け引きが今後の課題」と語り、試合の構成や展開を考えることで、技術だけではない戦い方の進歩を目指している。自己に対する冷静な分析と将来への鋭い目線。櫻井選手の強みはそこにあるのかもしれないと感じた。

 

決勝線は独特の緊張感に包まれていた
決勝線は独特の緊張感に包まれていた

 男子個人戦は、2組に分かれて総当たり戦の予選が行われた。櫻井選手も、ただ一人女性ながら男子の部に参加。5ポイント先取で、勝数の多い上位8名が決勝トーナメントに進出する。予選では、安直樹選手と加納慎太郎選手がそれぞれの組で強さを発揮し、ともに全勝で決勝トーナメントに駒を進めた。トーナメントベスト4に残ったのは、安、櫻井、加納、藤田の4選手。安選手と加納選手は東京、櫻井選手と藤田選手は京都をそれぞれ練習拠点としている。そして、予選で実力を見せた安選手と加納選手が順当に勝ち進み、この両者が決勝戦で相見えた。試合は白熱。それまでは和気あいあいと談笑も交えていた観客らも、勝負の行方に注意を傾ける。

15本先取となる決勝。しかし、試合は一方的な展開となった。俊敏な上体の動かしで常に試合を優位に進めた安選手が加納選手を圧倒した。加納選手も華麗な剣技で反撃するが、勢いの乗った安選手を止めることはできない。そのまま加納選手に2桁得点を許さず、優勝を決めた。

 


 試合を終えた両選手にお話を伺ったがお2人とも非常にシビアな現実を見つめていると感じさせられた。安選手は「内容的には全然ダメだった」とし、「専任のコーチに教えてもらいたい」と心の内を語ってくださった。加納選手も「しっかりとした練習の見直しが必要」と、今回の結果、さらには練習の環境についても2人は全く満足していない。今回のお話の中で「東京」というワードを共通して2人から聞くことができた。より上を、本物を目指す彼らにとってここは踏み台でしかない。もっと先にある東京でのメダルを現実にするため、彼らの歩みは止まらない。

 

 試合後には表彰式が行われ、小松理事長の閉会宣言で大会は幕を閉じた。撤去作業も、もちろんスタッフの手で行う。まさに、一から自分たちの手で作り上げた最初の大会であった。参加した選手は13名と、まだまだ人数としては十分とは言えない。しかし、こうやって全国から選手を集めて大会を開催できたことは、日本の車いすフェンシングにとって大きな一歩。さらにCMなどメディアへの露出も増え、メジャー競技への道は開けつつあると感じる。来年の第2回の開催、そしてその大会がどんな盛り上がりを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

 

 

(記事/慶應スポーツ新聞会 清野日奈子・岩本弘之・下川薫)