京都取材 初日

 私たちは、8月6日から2日間、京都で取材を行った。6日は、京都での練習見学と、アンチ・ドーピング講習会、7日は全日本選手権大会にそれぞれ同行。この遠征は、私たちにとって、初めての遠征であり、練習だけではわからない選手の姿をたくさん見ることができた。この2日間の取材をこれから3回にかけて連載。初回では、まず初日の様子を紹介する。

 

道場では実践形式の本格的な練習が行われる
道場では実践形式の本格的な練習が行われる

  はじめに、元山王小学校に常設されている「道場」での練習を見学した。ここは廃校になった小学校の教室を借りる形で20141225日から常設の練習場になっている。東京を車いすフェンシングの普及の場とするならば、京都は言わば強化本部。東京より整った設備で、選手らは己の力を磨いている。選手は皆、パラリンピックを目指す実力者たちだ。実戦形式の練習を繰り返し、コーチからだけでなく、選手同士でもアドバイスを送り合う。「強くなりたい」という気持ちをひしひしと感じる、密度の濃い練習だった。

 

選手もスタッフも真剣にドーピングについて学ぶ
選手もスタッフも真剣にドーピングについて学ぶ

  この日は、練習後にアンチ・ドーピング講習会が予定されていた。時間に合わせて、東京や北海道の選手たちも到着し、隣の教室に選手らが続々と集まった。

ADA(日本アンチ・ドーピング機構)から講師を招き、ドーピングとは何かから、検査の方法に至るまで1時間以上のみっちりとした講習を受けた。この講習会の開催は、競技能力だけでなく、考え方や行動もアスリートとして世界レベルを目指していこうとする協会の意識の表れだろう。選手らは話に真剣に耳を傾け、積極的に質問する姿も見受けられた。また講習後には、講師の大黒ゆきこさんから直接お話を伺うことができた。

 

その中で大黒さんは日本アンチ・ドーピング機構を「サポートをする機関」と語ってくださった。日本アンチ・ドーピング機構には選手やその周りに対する直接の強制力を持った機関ではない。主として選手に対し、世界アンチ・ドーピング規定に基づいて行動しなければならないということを伝えるという立場になる。アンチ・ドーピングはあくまで選手が自身やその周りのサポートスタッフに責任がかかるのだ。そういった部分には「もどかしさを感じる」というのも一つの側面だという。実際に選手の身近にいるのはサポートスタッフや競技団体になる。だからこそより大きな枠組みであるルールでサポートをし、「それぞれの立場から活動を推進していきたい」という思いを抱いているという。

全員に配られた冊子
全員に配られた冊子

世界アンチ・ドーピング規定は2015年に改訂され、その制裁の標準期間は2年から4年に延びた。これはそれだけ、ドーピングの現状やその与える影響を大きく見たということの表れだろう。最近ではロシアの国家規模でのドーピングの一件も耳に新しい。しかし、今回の研修会のように選手やスタッフ一人ひとりに直接届けられる機会というのは限られているのが現状だそうだ。そんな機会に大黒さんは「自分が行ける研修会の時はその競技で違反は出したくないという気持ちは持って接している」と、その思いを語ってくださった。この研修会は熱い気持ちをとても強く感じる機会になった。

 

車いすフェンシングについてまだまだ知らないことが多い私たちを、選手や協会の方々は温かく迎えてくれた。まずは、そのことに大いに感謝したい。1日目の取材では、世界の舞台、特に2020年の東京パラリンピックを見据えて選手らが懸命に汗を流す姿、そしてそれを練習環境の整備や講習会といった具体的な形でサポートする人々の姿を見た。また、ドーピングについて実際に学ぶことで、車いすフェンシングを含めた国際スポーツへの理解を深めることができた。日本の車いすフェンシングが「世界基準」に発展していくための道筋は、着実に出来つつある。私たちも車いすフェンシングに新しく携わっていく立場から、競技の躍進に貢献していきたいと、一層深く心に留める機会になった。

 

 

(記事/慶應スポーツ新聞会 清野日奈子・岩本弘之・下川薫)